歯周病
歯周病
当院の歯周治療は、「ただ歯石を取ってクリーニングをする」というものではありません。生活習慣病にも密接な関係があるため、個人差や生活する環境など「トータルから口を診る」必要があります。そのため、最初に規格性のあるお口の写真や精密なレントゲン、歯ぐきの検査を行い、必要に応じてリスクの高い方には生活習慣のチェックをします。そこから現状の説明をし、皆様それぞれの価値観に合わせた目標を設定し、歯周病治療がスタートします。歯周炎の怖いところは治療が終了した後、ホッとして手を抜いてしまうと歯周炎に気がつかない間に再発、進行してしまうなんてこともあります。治療後も気を抜かず担当衛生士とメンテナンスを行うことがとっても大事です!
歯周病とは、歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)から細菌が侵入し、歯肉に炎症を起こす歯ぐき(歯周組織)の病気の総称です。特に子どもでは歯茎が真っ赤にはれる「歯肉炎」が多いのですが、成人以降になるとただはれるだけではなく、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けだし、最悪歯が抜け落ちてしまう歯周炎になる方も多いです。意外かもしれませんが、当院では歯を失う原因として、むし歯よりも多くの割合を占めています。口臭の原因になることもあります。むし歯と異なり痛みがなく、気づかないうちに進行する特徴(silent diseaseとも呼ばれます)もあり、歯がグラグラになり抜け落ちそうになって初めて気がつくこともあります。あれ?ちょっとおかしいかな?と思ったら、念の為歯周病の検査をしていただくことをお勧めします!歯周炎に特効薬はありません。何よりも悪化しない様に、日頃からのセルフケアと健口の維持、問題の早期発見早期治療のためにもメンテナンスは欠かせません。
何より歯周炎は大切な歯を奪ってしまうだけでなく、全身疾患とも深い関わりがあることがわかっています。歯周病菌が口の中から血流に乗って全身をめぐることで、糖尿病や動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、早産などを引き起こしてしまう可能性があります。自分の血管の中をお口の中のバイ菌が入り込むなんて、考えるだけでゾッとしますね。「たかが口の病気」と放っておくと、健康寿命を縮めてしまいますので注意が必要です。
あなたの歯ぐきは大丈夫ですか?
あれ?って思うことはありませんか?
歯周病をチェックしてみましょう。
このような症状がある方は歯周病の可能性があります。
歯みがきを中心としたセルフケアで改善しない場合、お早めの受診をお勧めします。
歯周病の主な原因は、細菌です。極論を言えば、細菌がなければ歯周病にはなりません。ただし、特定の細菌だけで歯周炎になるわけではなく、現在では特定の細菌のみを対象にした殺菌等は行われていません。口腔内常在菌なので、歯周病としては困った働きをする細菌でも、もしかしたら他では良い働きもしているかもしれませんね?人体にはまだわからないことがたくさんあります。ただし歯周病を進行されては困ります。細菌が歯と歯ぐきの間に戻ってこないように「1日に一回は徹底的に歯みがきをする」習慣を身につけてもらいたいと思っています。
まず細菌が活動しやすいような不潔なお口の中では歯周病の進行は防げません。前述したように歯周病になっている方は特に、少しでも歯と歯ぐきの間に細菌が残らないように、歯ブラシやフロス、糸ようじ、歯間ブラシなどを適材適所に用いて、細菌が住みづらい環境を保ちましょう。そして歯の食いしばりや、ガツガツと食べる時に無理な力がかかる部位は歯周病が進行しやすくなる「2次性咬合性外傷(噛み合わせによるケガ)」になってしまう可能性があります。よく噛んで(回数)食べてねと昔から言いますが、噛む力は適度に控えめでお願いします。
糖尿病など免疫に影響する全身疾患を持っている方や、すぐに歯ぐきがはれやすい方は比較的に歯周炎が進行しやすいです。一方、口の中がニオイがぷんぷんするぐらい汚い方で、むし歯も歯周病にもならないという不思議な方も一定数いらっしゃいます。家族的に歯周病になりやすい、むし歯になりやすいという家族もいらっしゃいます。肌荒れしやすい体質や、日焼けしやすい体質など、こればかりは一つの個性(体質)として寄り添うしかないのかな?と感じています。
といっても、毎日毎日、歯ブラシを完璧にこなしていくのは困難なこともあります。旅行中やとっても疲れている日など、たまにはうっかり忘れる日があっても、1日歯ぶらしをサボったら重度になり取り返しがつかないことに…ということはありません。ただ、サボり続けると取り返しのつかないことになります。日々のルーティンに「1日に一回は徹底的に歯みがきをする」習慣をぜひ身につけてもらいたいと考えています。
歯周病は一般的に次の段階を経て進行していきます。
健康な状態
薄いピンク色の歯肉で、歯と歯ぐきのすき間(歯周ポケット)が少なく(一般的には3mm以内)引き締まっています。ブラッシング時や検査時に出血しません。
歯肉炎
歯ぐきに炎症が起き、歯周ポケットが深くなります(一般的には3mm以内)。痛みはまだありませんが、ブラッシング時や硬いものを食べると出血することがあります。検査時にも出血します。
<見た目の状態>
歯ぐきが腫れたり帯状に赤くなり、歯と歯肉との間にプラーク(歯垢)が見られることが多いです。
軽度〜中等度歯周炎
歯ぐきの炎症だけではなく、歯を支える骨(歯槽骨)にも炎症が進んだ状態です。炎症が慢性化し歯を支える骨に細菌が感染しないように、身体が骨を溶かす細胞(破骨細胞)に指令を出して骨を溶かしはじめます。歯周ポケットが深くなり(一般的には4mm~6mm)歯がグラつきはじめることもあります。口臭や、歯が浮いたような感じを自覚することもあります。治療をしていると検査で中等度の歯周炎にかかっていても気がついていない方が多いように感じます。注意が必要です。
<見た目の状態>
全体的に歯肉が赤く腫れあがり、変色がひどくなることもあります。骨が溶けていても見た目に全く変化がないことも多くありますので注意が必要です。
重度歯周病
歯根を支える骨がほとんど溶けています。歯周ポケットがかなり深くなり(6mm以上)、歯茎が炎症を繰り返して歯の根が露出したり、歯のグラつきが急にひどくなります。ここまで進行すると健全なもとのお口の中の状況へ戻すことは難しくなります。口臭がきつくなり、膿も出て、放っておくと歯が抜け落ちてしまいます。
<見た目の状態>
歯肉は赤紫色で、歯と接している歯肉がさらに腫れあがります。歯の根が露出したり、歯と歯の間が広がり、食べ物もよく詰まるようになります。歯並びが出っ歯になったり、口が閉じづらくなる方もいます。
近年の研究では、慢性的に歯周炎にかかっていると、様々な全身疾患にかかるリスクが高まることがわかってきました。歯周炎の原因となる細菌群や産生する毒素が歯肉の毛細血管を通じて全身の血管の中を漂い、脳卒中(脳梗塞)、心臓血管疾患、糖尿病の悪化などを引き起こすリスクが高まるという研究も多数出ています。
またお口の中を不潔にしていると、細菌が気道から気管支や肺に入り、気管支炎、誤嚥性肺炎の原因になることが医科でも問題視されています。
また、妊産婦の皆様は早産や低体重児出産のリスクも高くなるため、出産前の歯科検診は重要です。できれば将来子どもをと考えがある方は、今から妊娠時のリスクを減らすためにも、お口の中の健康(健口)を目指していただければと思います。当院でしっかりサポートさせていただきます。
歯周病と全身の健康は密接な関係があります。健康的な生活を送るためにも大切なお口の中の健康(健口)を大切にしていきたいですね。
歯周炎の治療は、歯科医師や歯科衛生士による診査から、患者さんそれぞれのお口の中の問題点や重症度を把握し、おおまかな状態を診断します。そして、その状況を患者さんにも共有してもらい、それぞれの目標をお互いに確認し治療がスタートしていきます。
1
歯周基本治療
まずは歯科衛生士が主体となり「歯周基本治療」を行い、まず歯みがき指導でセルフケアが獲得された後、必要に応じて歯石など細菌が住みやすい環境を改善していきます。どうしてもセルフケアができないピッタリしていない詰め物や被せ物は歯科医師があらかじめ患者さんに相談し、同意の上でやり直すこともあります。
2
歯周外科治療
歯周基本治療では改善しなかったところを、患者さんに相談し、同意の上で歯周外科を行うことがあります。しっかりと病変を目視しながら行うことができます。望まれない場合はメンテナンスでできるだけ悪化しないように見ていくこともあります。
3
口腔機能回復治療
歯周炎が改善された後、歯周炎のメンテナンスしやすさも考慮した被せ物の作成や、歯並びの矯正をして噛み合わせの改善をすることができます。
※成人矯正を望まれる方は、隠れた歯周炎がないか確認するため歯周検査は必須で行います。
治療後、再検査で改善が確認されセルフケアで様子が見れる状況になれば、メインテナンスに移行します。メンテナンスで悪化が見られた場合は、早期治療ができるように担当衛生士制で対応します。
※メインテナンス:初期むし歯や安定しているものの歯周ポケットが残存している箇所などリスクのある部位を定期的に検査、チェックすることでを再発させず、口内の健康な状態を維持していくための治療。病変の早期治療に繋げ、重症化の防止にも効果的です。